中国の会社が開発して話題となっている「DeepSeek-R1」とはどんなAIなのでしょうか?
使っても問題はないのでしょうか?
本記事では、AI初心者の方向けにDeepSeekサービスの概要と利用上の注意点を分かりやすく解説します。
DeepSeek-R1の全貌が把握できます。
DeepSeek-R1とは?
DeepSeek-R1は、先進的なAI技術とデータ分析を強みとするDeepSeek社によって開発されました。
DeepSeek-R1は、DeepSeek社の最新モデルであり、推論能力に特化した大規模言語モデル(LLM)で、強化学習を利用することで、推論性能が大幅に向上しました。
また、DeepSeek-R1は低価格ですが、推論、数学、コーディングなど、OpenAI製の「GPT-4o」や「o1」と同等の性能としています。
DeepSeek社の本社は中国
DeepSeek社は2023年設立のスタートアップ企業で、本社は中国にあり、AI研究とデータ分析技術の最前線で活躍しています。
2024年12月にLLM「DeepSeek-V3」を公開しました。DeepSeek-V3は、今回話題のDeepSeek-R1のベースとなったのLLMです。
主に北京を拠点とし、アジア市場を中心にビジネスを展開していますが、北米やヨーロッパにも進出し、グローバルな成長を遂げています。
同社は、企業向けのデータ活用ソリューションを提供し、ビッグデータの効率的な処理と洞察の抽出を支援しています。
グローバルに展開し、様々な業界で活用されていることから、高い信頼性を誇ります。
LLMについて知りたい方は、以下の初心者向け記事をご覧ください。
創業者:梁文峰(リャン・ウェンフェン)氏
創業者は、中国のクォンツ・ヘッジファンド「High-Flyer Quant」の創業者でもある梁文峰(リャン・ウェンフェン)氏で名門の浙江大学コンピュータ科学専攻出身です。
梁文峰はDeepSeek社の設立にあたり、北京大学、精華大学、北京航空工科大学などからコンピュータ科学分野の博士号取得者集め、大規模言語モデル(LLM)の開発を行ったといいます。
開発費用の安さが話題に
DeepSeek-R1は、他の高性能AI分析ツールと比較して開発費用が大幅に抑えられており、そのコストパフォーマンスの高さが注目されています。
これにより、より多くの企業や研究機関が手軽に導入できる点が魅力となっています。
ChatGPTなどに使われる米国発AIの大規模言語モデル(LLM)の開発には、数億ドル(数百億円)〜10億ドル(約1500億円)に上ると言われています。
理由は、エヌビディア「H100」など先端GPUを何万個も使ってLLMをトレーニング(機械学習)する必要があるためです。
一方で、DeepSeekも同じエヌビディア製「H800」という格落ちしたGPUを2048個だけで構成したことで、コストが約560万ドル(約8億7000万円)で出来たといわれています。
「H800」は、中国向けのNIVIDA社製GPUです。
その結果、米国OpenAIの数億ドル(数百億円)〜10億ドル(約1500億円)に比べ、中国DeepSeekは約560万ドル(約8億7000万円)。
- 米国OpenAI:数億ドル(数百億円)〜10億ドル(約1500億円)
- 中国DeepSeek:約560万ドル(約8億7000万円)
米国の先端製品の約100分の1程度の開発費で同程度の製品を作り上げたといえます。
NVIDIA社とGPUについて
NVIDIAは,1993年4月に設立されたアメリカ・カリフォルニア州サンタクララに本拠地を置く半導体ファブレスメーカーです。
ファブレスとは、自社工場や生産設備を持たず(fabrication facility less = 工場を持たない)、「企画・開発・設計」に特化したビジネスモデルおよび、受託先であるファウンドリに、半導体の製造を100%委託する半導体メーカーのことをいいます。
NVIDIAはGPUの分野では世界をリードしています。
GPUとはグラフィックス処理ユニット(画像処理装置)のことで、ゲームやクリエイター業務、データセンターなど幅広い分野で使用されています。
GPUの特徴は、並列処理能力に優れていることです。並列処理能力とは、同時に複数かつ複雑な演算を処理する能力で、AIやディープラーニングの分野でも注目されています。
DeepSeek-R1の性能概要
ここで分かりやすくDeepSeek-R1の性能概要を2025年1月29日時点の情報から簡単に解説します。
主な特徴と性能
DeepSeek-R1は、すでに高速データ分析ツールとして不動の地位を確立しています。
主な特徴を以下に挙げます。
- 高速分析能力:大量のデータを短時間で分析できるキャパビリティを持つ。
- AI搭載:自動分析や予測機能により、データから最適な解決策を展開できる。
- セキュリティ対応:データの保護とプライバシーに重点を置いた構成。
- コストパフォーマンスの高さ:開発費用を抑えながらも、高品質な分析機能を提供。
- 多様な業界対応:ビジネス、医療、金融、研究など幅広い用途で活用可能。
このように、大量のデータを短時間で処理する高速分析能力を備え、AIによる自動分析・予測機能を搭載。セキュリティ対策も万全で、プライバシー保護を重視しています。
開発費用を抑えつつも高品質な分析機能を提供し、ビジネスや医療、金融、研究など多様な業界で活用可能なツールです。
技術仕様
- データ処理速度:1TBのデータを分析するのに小時間単位の時間で完了する性能。
- 対応プラットフォーム:クラウド環境やオンプレミス環境で使用可能。
- API連携の容易さ:他のツールとの簡単なインテグレーションを実現。
DeepSeek-R1は、高速なデータ処理能力を備え、1TBのデータを短時間で分析可能です。
クラウド環境とオンプレミス環境の両方に対応し、柔軟な運用が可能。さらに、API連携が容易で、他のツールとの統合もスムーズに行えます。
これにより、さまざまな業界や用途で効率的なデータ分析を実現できる強力なツールとなっています。
他の製品との違い
DeepSeek-R1は、特に分析速度とAIの能力で他のツールとの差異を見せています。
例えば、一般的なツールでは膨大なデータの処理に時間がかかることが多いですが、DeepSeek-R1は短時間で何百万件ものデータを処理し、パターンを自動検索できます。
これにより、従来は専門知識が必要だった高度な分析も、スムーズに行える点が大きな強みです。
競合製品と比べても、より迅速かつ正確にデータを活用できるのが特徴です。
DeepSeek-R1は、他のデータ分析ツールと比べて特に分析速度とAIの性能に優れています。
使い方
DeepSeek-R1は、Webチャット、API、ローカル環境を初めとする様々な方法で利用できます。
ここでは、無料の簡単な方法「Webチャット」の使い方を説明します。
Webサイトにアクセスし、アカウントを作成またはログインします。
2.ログイン後に表示される画面から「DeepThink」ボタンをクリックすると使えます。
料金体系
DeepSeek-R1の、Webチャットを利用すれば、無料で機能を試すことができます。
APIを利用する場合
初心者の場合APIを利用することはまれだと思いますが、参考に有料の料金を説明します。
従量課金制を採用しており、入力トークン数と出力トークン数に基づいて料金が発生します。
トークン | 料金 |
---|---|
入力トークン | 100万トークンあたり 0.14ドル(キャッシュヒット時) |
100万トークンあたり 0.55ドル(キャッシュミス時) | |
出力トークン | 100万トークンあたり 2.19ドル |
トークンとは、テキストデータを分割する最小単位のことです。
つまり、単語や句などがトークンです。
トークンを入力として受け取り、それに基づいて自然な日本語を生成します。英語の場合は1ワードが約1トークン、日本語の場合はひらがな1文字約1トークン、漢字1文字約1トークン、と言われています。
利用上の注意点
DeepSeekのサービスを利用する場合、注意するべき事項があります。
一般ユーザーがDeepSeekを利用する場合、ユーザーの個人情報が同社のような中国企業を経由して、中国政府の手に渡る危険性が指摘されていると警戒している声も聴かれます。
また、利用規約には、エンドユーザーや開発者を含む利用者が不利益を被る可能性のある条項が含まれているようです。
該当する部分を引用してみました。
9.Governing Law and Jurisdiction
引用:DeepSeek Terms of Use
9.1 The establishment, execution, interpretation, and resolution of disputes under these Terms shall be governed by the laws of the People’s Republic of China in the mainland.
9.2 In the event of a dispute arising from the signing, performance, or interpretation of these Terms, the Parties shall make efforts to resolve it amicably through negotiation. If negotiation fails, either Party has the right to file a lawsuit with a court having jurisdiction over the location of the registered office of Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence Co., Ltd.
上記利用規約「9Governing Law and Jurisdiction」を翻訳しました。
9.準拠法および裁判管轄
9.1 本規約に基づく紛争の確立、執行、解釈、解決は、中華人民共和国本土の法律に準拠するものとします。
9.2 本規約の署名、履行、または解釈に起因して紛争が発生した場合、両当事者は交渉を通じて友好的に解決するよう努力するものとします。交渉が失敗した場合、いずれかの当事者は杭州ディープシーク人工知能有限公司の登記上の事務所の所在地を管轄する裁判所に訴訟を起こす権利を有します。
DeepSeekのサービス利用に関する一切の紛争は、中華人民共和国の法律に準拠し、日本国内の法律や裁判所は適用されません 。
つまり、DeepSeek間とのトラブルは、中国の法律に基づき、中国の裁判所で手続きを行うことになります。
日本のユーザーには、言葉、手続き、費用などが大変になるのではないでしょうか。
【参考】
中国のサーバーを経由せず利用する方法
一般無料ユーザーが利用しているうちに、気が付かずに大切な情報や個人情報などDeepSeekで漏洩する可能性も否定できません。
そこで、中国のサーバーを介さずにDeepSeek-R1を利用する方法があります。
そもそもDeepSeek-R1は、オープンソースモデルなので他国に企業でも利用できるメリットがあります。
DeepSeek-R1を取り込んだのが米国のPerplexity(パープレキシティ)です。
米国のPerplexityでDeepSeek-R1を使う
Perplexity、基本的な機能は無料で利用できます。プランは、無料版、Pro(有料版)、 Enterprise(企業向け)があります。
■公式サイト: Perplexity
無料版は、ログイン不要で基本的機能が利用できます。ただし、画像生成やPages(リサーチ内容をドキュメント化する機能)は利用できません。
Perplexityは、無料ユーザーでもDeepSeek R1を1日3回まで利用できます。
- Perplexityにアカウント登録する
- Pro Search”機能を使用する
- Writing”モードを選択し、Web検索をオフにする
この方法により、実質的にDeepSeek R1を単独のAIチャットとして使用できます。
さらに、Writingモードでは他の主要AIモデル(OpenAI o1、GPT-4o、Claude 3.5 Sonnet)も利用可能です。
ただし、無料版には1日3回の制限があります。制限を解除するには月額20ドルの有料版に登録する必要があります。
Perplexityの使い方を以下の記事で解説しています。
まとめ
中国のDeepSeek社が開発したDeepSeek-R1について、概要と使い方、注意点について解説しました。
日本国内で利用する場合は、注意点を考慮することが大切です。
AIは日々進化しているため、最新の情報は公式サイトで確認の上利用することをおすすめします。